川崎 | 「お帰りなさい。おそかったですね。」 |
ブラウン | 「ええ、大学の帰りに深大寺というお寺へ遊びに行ったんです。遊びにというのはおかしいですか。
お寺ですから、お参りと言わなければいけません
か。」 |
川崎 | 「いいえ、日本人にも実際にお参りをしないで遊んで
帰る人が多いんですから、かまわないでしょう。
深大寺っていい所ですってね。」 |
ブラウン | 「ええ、奈良時代に建てられたんだそうですから
ずいぶん古いお寺ですね。国宝の仏像もある
そうです。」 |
川崎 | 「古いお寺らしいけど、有名になったのはこのごろ
らしいですよ。このごろは一つの観光地のように
なって、お参りに行く人よりは遊びに行く人が多い
そうですね。」 |
ブラウン | 「おみやげを売る店なんかたくさん並んでましたよ。
これ、奥さんにおみやげにと思って買ってきま
した。かわいいでしょう。」 |
川崎 | 「それはありがとうございます。あら、だるまじゃ
ありませんか。」 |
ブラウン | 「だるま - というと、あの中国に禅を伝えた僧の
ことですか。」 |
川崎 | 「ええ、そうですよ。座禅をしているから立ったり
歩いたりできない。それで、手も足もついていない
でしょう。太いひげもあるし、かわいいとは
言えませんわ。」 |
ブラウン | 「そうですね。ぼくは、赤い着物を着てるんで、
つい女の子の人形だと思って
しまいましたよ。(笑い)」 |
川崎 | 「墨絵なんかにも、だるまさん、よく出てきますよね。」 |
ブラウン | 「ええ、見たことあります。壁に向かって九年間も
座禅をして、悟りの境地に達したんだそうですね。
偉いもんですね。僕なんかとてもまねできません
よ。」 |
川崎 | 「でもめんどうな日本語を三年もやっていらっしゃる
じゃありませんか。それもきびしい修行の一つ
でしょう。」 |
ブラウン | 「でも日本語はいすにかけてもできますからね。」 |
川崎 | 「え。」 |
ブラウン | 「ぼくは五分間も続けてすわっていられません
から。」 |
川崎 | 「ああ、その事ですか。でもこのごろは十分ぐらい
すわれるじゃありませんか。」 |
ブラウン | 「ええ、おかげさまで。」 |
川崎 | 「アメリカでも禅ブームといって、座禅を組むのが
はやっているんですってね。」 |
ブラウン | 「ええ、一部にそういう流行もありますが
ほんとうに禅を理解してやっているのかどうか
わかりませんね。みんな自分流に解釈している
ようです。でも、日本についての関心が高まって
いるのはけっこうなことだと思いますねえ。」 |