Lesson 9

応用会話


夫の母        65才
40才
35才


「あら、おばあ様、なんか持ち出して、どうなさったん ですか。」
夫の母 「だってもう三日もお邪魔しちゃったから、そろそろ おいとましょうと思うんですよ。」
「でも、昨日お葬式が済んだばかりで、まだ東京見物もし てらっしゃらないんですもの。もう少しゆっくりしてい らっしゃいませよ。」
「おや、おばあさん、もう帰るんですか。もっと遊んでい ったらどうですか。」
夫の母 「でもねえ。」
「なにか気に入らない事でもあったんですか。」
「こんな狭いアパートで、田舎からいらしたおばあ様には お気の毒ですけど。」
夫の母 「いいえ、狭いのは東京だから覚悟して来たんですがね。」
「何かあったんですか。」
夫の母 「実はね、夜よく眠れないんですよ。」
「ああ、上がやかましいんですね。」
夫の母 「そうなんですよ。ちょっとうとうとしたと思うと、上で ガチャガチャって変な音が始まって、それが夜明けまで 続いているんですからね。」
「それ、マージャンですわ。いやですねえ。また上の学生 ときたら徹夜マージャンなんかして。この間、大家さん に注意していただいたばかりなのに。」
夫の母 「その前の晩は十二時頃まで猫がしめころされるような音 立てて。」
「それ、なんです。」
「ギターですよ。」
夫の母 「そうそう、その西洋三味線の練習ですよ。夜十二時頃 まで。」
「それは僕知らなかった。」
「だってあなた、宴会で一時頃お帰りだったじゃない。」
「あ、そうだっけ。」
夫の母一体、あの学生は大学で何をしてるんですかね。音楽 大学へ行っているんでもあるまいし、楽器ばかり鳴らし てて卒業出来るんですかね。」
「明るくてほがらかな学生と言うと聞こえがいいけど、 はっきり言うと怠け者なんでしょうね。」
「僕も何度か大家さんに言ったんだが -- じゃ、今度は直接 に言いましょうか。ね、どんな顔した学生なんだい。」
「いつもにこにこしたりこおうそうな青年よ。」
夫の母 「あんた方、どうして早く一戸建ての家に入らないんです か。ね、こんなにうるさい所にいたんじゃ、子供達も 勉強が出来なくて困るでしょう。」
「そりゃ僕に働きがないからですがね。でもいま大都市じゃ 住宅ものすごく高いんですよ。」
夫の母 「やっぱり政治が悪いんですかねえ。」
「ま、おばあさん。今度はきっと僕が注意しますから、もう 一晩泊まってって下さいよ。」
「お願いしますわ。子供達も明日の日曜に、おばあ様とご いっしょにデパートへ行くの、楽しみにしてますもの。」
夫の母 「はいはい、じゃそうしましょうか。」