Lesson 4
テレビの功罪
こ十年来 (1) 、テレビの普及率は高まる一方で、現在では二千三百万台という 膨大な数に達したという。一方トランジスターラジオが実用化されて以来、 ラジオの数もふえ続け、ながら族という人種さえ現れた。中には、ラジオを 聞き、テレビを見ながら宿題もするというまるで聖徳太子のような子供さえ いるという。
テレビ、ラジオのこのような普及ぶりから当然予想されるように、子供たち はマス・コミから良かれ悪しかれ (2) 非常に大きな影響を受けている。たとえば、 先日の新聞によると、ギャングごっこをしていた小学校の三年生が同級性を ナイフで刺して、重傷を負わせた。「テレビをまねた」のだそうだ。しかし、 テレビ番組のすべてが悪いと一概には言えない。オリンピックの中継は、 当時までほとんど知られていなかったいくつかの運動競技の楽しさを、 どれほど多くの人々に紹介したことだろう。あるいはまた、われわれは、 いながらにして世界のさまざまな生活を見ることができ、その事が、世界中 の人々がお互いを理解し合うのに大きな力となっている。
ある人々は、前のような例をもとにしてテレビは良くないと言い、他の人々 は後のような例をもとにしてテレビは良いと言う。しかし、ここでよく 考えてみなければならないことは、テレビもラジオもともにたかだか一つの 道具にすぎないということである。われわれは、この道具をじゅうぶんに 使いこなすだけの賢明さを持たねば (3) ならず、テレビの持つこの大きな影響力 の巧みな御者とならなければならない。
会話文
A: このごろのテレビの普及ぶりはすごいらしいですね。
B: ええ、ふえる一方らしいですよ。
A: 今でも、ふえ続けてるんですかね。
B: そうだそうですよ。それでね、いろんな悪い影響があるらしいですよ。
A: そう一概に、悪いとばかりは、決められないんじゃないですか。
B: たとえばね、この間の新聞によると、小学校三年の子がね、ギャングごっこ をして友だちに大けがをさせたんだそうです。その子は「テレビのまねだ」 と言ったんだそうです。
A: でも、この間のオリンピックの中継を見たでしょう。
B: ええ。
A: その時、そのころまではほとんど知られてなかった競技、たとえば重量上げ なんかを初めて見て、ようやくおもしろさがわかったなんて人も、ずいぶん 多かったんじゃないですか。こりゃテレビの良い面じゃないですかね。
B: そりゃそうですね。世界中のいろんな生活ぶりを見ることもおたがいに 理解し合うのに大きな力となってるってことも、まちがいなさそうですしね。
A: ええ、これだけテレビがふえりゃ良かれ悪しかれみんながテレビの影響を 受けるってわけですけど、テレビだって、けっきょく道具にすぎないんです から、やっぱりこういう道具をじゅうぶんに使いこなすだけ賢くならなきゃ ならないってことじゃないですか。
= 留 意 語 句 =
テレビの普及
数に達する
影響を受ける
・・・をまねる