吉川 | 「やあ、新しいテレビをお買いになったんですね。」 |
藤原 | 「ええ、うちでもとうとう二台目を買いました。わたし
どもと子供たちでは見たい番組が違いますので。」 |
吉川 | 「しかし、テレビの普及ぶりは大したもんですね。」 |
藤原 | 「そうですね。日本全国で何万台ぐらいござい
ましょうね。」 |
吉川 | 「そうですね。二千三百万台近いんじゃないですか。
とにかく膨大な数ですよ。」 |
藤原 | 「じゃ、大ていの家には一台あるわけですから、子供
たちがながら族になるのも当然でございますわね。」 |
吉川 | 「うちの娘たちなんか上のも下のも、完全なながら族
なんですよ。一日じゅうテレビをつけっぱなしです。」 |
藤原 | 「でもね、子供ばかりじゃございません。お隣の奥さん
なんか、洗たく機を回しておいて、テレビでお芝居の
中継を見ながら、編物をするんですって。しかも、
編物をしながら子供の宿題を手伝ってやるんだって
おっしゃってましたよ。」 |
吉川 | 「なるほど。家庭の電気気具がこう普及してくると
われわれの生活ぶりも変わってきますよね。奥さん
がたの仕事が楽になってけっこうですね。」 |
藤原 | 「はあ、それはもう、仕事は楽になりましたが、便利に
なると時々悪いこともありますね。たとえば、先日の
新聞によりますと、小さい子供が洗たく機の中に落ち
て死んだそうですし、うちの子も扇風機でけがをした
ことがございますし。」 |
吉川 | 「それはいけませんね。実はわたしも大きなテレビっ子
で、夜おそくまでテレビを見ていて、朝起きられない
ものですから、家内がおこりましてね。」 |
藤原 | 「そうですか。で、どんな番組をご覧になりますの。」 |
吉川 | 「まずスポーツの中継ですがね、それから外国の生活を
紹介した番組なんか好きですね。こういうのは国際間
の理解を高めるのに役立ちますから。」 |
藤原 | 「そうですね、わたくしもそういう番組は大好きでござ
います。マス・コミの影響っていいますと、一概に
悪いように言いますけど、いい点もあるわけでござ
いますものね。」 |
吉川 | 「そうです、そうです。じゃ、今度家内にお会いになっ
たら、ぜひそう言ってやってくださいませんか。」 |
藤原 | 「はいはい、かしこまりました。」 |
吉川 | 「テレビも洗たく機と同じでやっぱり一つの道具ですか
らね、うまく使いこなすようにしなくちゃいけないん
ですよね。」 |